”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

僕も新潟で拉致されていたかもしれない

 「小泉訪朝」が終わったので、またこんなのを書いてるんだけど、なんだね。北朝鮮はあんなもんだろうというのはあったけど、実際にあれだけの日本人が殺されているとはねえ。さすがにいやになる。 後のおまけもあって、拉致された人たちの死亡年月日とされる情報を隠していた外務省ってのも「ハングルが読めませんでした」とか「翻訳に五時間かかりました」とか、いい加減にしてくれというんだ。あんなんで「外交のプロ」だとか偉そうに言うな、というか、大使閣下になると総理大臣なみに給料がもらえる上にその他の余録もたっぷりだとか、ふざけた話だよな。今時、本気で閣下なんて名乗るのはデーモン小暮だけだろうぜ。外務省の昔の失敗と言えば、真珠湾攻撃だな。宣戦布告の訓電の翻訳に手間取って、しかも昼休みには二時間もかけて中華料理のフルコースかなんか食って、結局、攻撃開始前に宣戦布告したことにならず、それで六十年たっても「日本人は卑怯なだまし討ち」だのなんだの、言わ れるわけだ。9・11テロの後も「まるで真珠湾みたいだ」の「ビンラディンはジャップのように卑怯だ」の「カミカゼ攻撃」だの、いちいち引き合いに出されるわけだ。 外務省はいらない。本当に。すぐに解散しなさい。なければ困ると思っているのは本人たちだけだろう。 ところで私事になるけど、私も新潟県の海岸沿いに住んでいたことがあるんですよ。二、三歳の頃だけど、日本海が見えるところで、海岸にあげてある船だとか漁師のおじさんだとか、一般の人にも魚をわけてくれる魚河岸みたいなのがあったのを覚えている。よく母親の後についてちょこちょこ歩いていたと思うし、お隣の白い犬(当時はやっていたスピッツだったろう)と遊んだとか、父が軒先まで積もった雪をかいているだとか――結構、記憶の底に残っています。それが一九七〇年ごろだったと思う。その後は福井県に移ったけど、そこは海沿いではなかった。 一連の拉致は七八年ごろに起きていて、だから私はこ うして日本に三十五年間、住まわせていただいておりますが(?)、なんかこう、他人事ではない。もう少し早い時期に北朝鮮の活動が活発化していたら、私や私の家族だって、突然、連れ去られていたかもしれない。
 今時の工作船は、先日、引き揚げられた通り、強力な四基の発動機を備えたかなり大型の偽装漁船で、あの国なりに船のグレードアップが図られている。今回、撃沈されたのは工作母船で船足が遅かったけど、前に海上自衛隊のイージス艦が追撃した時の不審船は、結局、あまりの早さに日本の新鋭艦が追いつけなかったほど高性能でした。しかし七〇年代の工作船は相当にひどい船だったという話もあり、ぼろくその木造船だったともいいます。そんなへぼ船の真っ暗な船倉に押し込められて、運ばれる気持ちというのはどんなもんだったのか、特に中学生の子供までいたわけで、ぞっとするなんてもんじゃ済まない。
 なんか日本人というのは、「侵略戦争と植民地支配を反省せよ」と言われれば何もいえない腰抜け、ということでなめられ切ってここまできました。北朝鮮はかくのごとく論外だが、近頃は中国は尊大だし、韓国もずいぶんと無茶苦茶だし。なにが友好ムードなのだろう?
 竹島を占領したあげくに、「日本海は植民地支配の負の遺 産なので、東海と呼ぶべきだ」とか、ふざけるな。日本海が気に入らない、というのはまだ分かるが、なんで東の海なんだ。自分らからみて東にある、というだけのネーミングだろうがッ。こっちから見たら東じゃねえんだよッ。そんでまた国際地理協会の理事なんかを接待漬けしてるんだろう。W杯の審判を接待漬けしたようにさ。
 ケンチャナヨじゃねえってんだ。腹の底から不快だぜ。若い日本人は生の日本軍なんて見たことも聞いたこともないんだからな。六十すぎたうちの親だって、物心つく前にカーキ色の服着た兵隊さんを見たことが一度あるとかないとか、そんなもんなんだ。そこらへんを駆け引きで持ち出されて恐れ入る年寄りの政治家も外務省も、もういらねえんだ。いつまでもおとなしいお人好しだと思われては困るんだよな。
 ぜえぜえ。いかん、激してきた。ほんでもってなんだ……パレスチナは泥沼でさ、イラクについては、アメリカは「これからは気に入らない国はどんどん先制攻撃するから、そこんとこよろしく」だってさ。アメリカの先制攻撃は常に侵略じゃないそうなんだ。でも他の国がやると成敗されるんだってさ。何さまアメリカ?
 なんか二十一世紀って、いやな感じじゃない? 人種戦争、民族戦争、宗教戦争。これがどっと噴き出す世紀 になっちまいそうですな。
 アメリカ軍ってのは湾岸戦争の後、めちゃくちゃ強くなってて、本心じゃもうほかの国の加勢なんて要らないンですよ、実際。米陸海空軍は未来型のSF軍隊の実現に邁進していて、特に陸軍はアンドロイドそこのけというか、機動戦士ガンダムみたいな兵士を汎用装甲車と輸送機、IT情報網でつないだ「緊急展開機動軍」ドクトリンというのを打ち出して、世界中どこにでも軍隊をさっと送って鎮圧できるようにしたい、とか。これはアメリカ初の日系人陸軍大将であるシンセキ陸軍参謀総長が発議したんだとか。空軍はもはやFラプターに代表される、操縦士が必要じゃないほど自動制御されたハイテク機ばかり、巡航ミサイルは精度が上がり、小形核兵器を地下に打ち込むスマート爆弾も開発済みだそうです。海軍は世界の海を支配する圧倒的な原子力空母機動部隊が相変わらず有効。米空母一隻で、世界中のどこの国の空軍も勝てない。それが十六隻もあるわけ。でも金食い虫なので「もっと近代的なやり方はないのか」と議会は非難しているらしく、予算を減らされるのを恐れた海軍は一生懸命、市民向けのサービスをしている、それで起きたのがハワイの実習船沈没事件だった、と。
 要するに、米軍の敵はないのであります。そして、ブ ッシュ君の言う「アメリカ的生活様式」を守るために、そうじゃない国の文化は破壊され、またついてこれない敵性国家は「先制攻撃を辞さない」ということ。イラクにせよ北朝鮮にせよ、さらにうかうかしていると中国だって、我が国だって、あちらの邪魔になるなら容赦なく潰されることでしょう。
 こういうのが二十一世紀の正体だったとしたら、なんとおぞましいのだろうか。二十世紀は破壊と殺戮の世紀だったといいますが、今世紀は抑圧と破滅の世紀になるのではないだろうか。


ざわざわざわ、と

ざわざわざわと立ち騒ぎうなる木立の葉擦れ
きしみうなる ぼくらは夜明けの嵐におびえて
たちすくむ だけなのか
なのか
なんかやだ 朝まではまだ間がある

子供たちは楽しいえんそくを夢見て
ピクニックバッグにはかわいいお弁当
クッキーにサンドイッチ それから水筒に紅茶

軒先のてるてるぼうずは あしたはきっといいことあるさ と笑っている というか さ
いいことあろうが なかろうが しらないさね
おれはお天気になりさえすればいい
絶好の空爆日和になれば 世界中の空はつづいているのだよ だってさ

ざわわざわわざわざわ こわくはないのかいどこにいくんだろうか 引率の先生は君たちをちゃんと守ってくれるのだろうか 世界の色はどんどん変わっていくよ 大きくなるまで 大人になるまで
パパやママは君らを守ってくれるだろうか 衆参両院は君らを守ってくれるだろうか 国際条約は有効だろうか テレビゲームは期日通り発売されるだろうか
十年後にも二十年後にも三十年後にも君たちは
幸せだろうか
ぼくはしらないしらない ぼくは
守ってあげるとは
いえない 今日の嵐を乗り切ろうと身をすくめて小さくなっているだけの ぼくは
ざわわわざわわ ざわざわ ごうごう
風速は三十メートルか 四十メートルか

しらない しらない 気象庁に聞いてください
若い人はかわいいハートが好きなんだってね
これからもたのしいまいにちがつづくと
しんじているんだってね
もちろんそういうひともいるだろうね
でもそうじゃないひともいるだろうね
悲観してても始まらないよね 何とかなると思って
がんばるべきだろうね なんだか浜崎のうたみたいだね しんじあったり あいしあったり そんなことが
みらいをつくってく そう思いたいよね

とかなんとか ぼくはしらないさ 耳につくのは
ざわわざわわ ざわざわ 艦砲射撃のように
あらあらしい明日への風
ピクニックに行けたらいいね ずっとたのしい
あしたがあさってがみらいが つづくといいね
いいね そうだよね こうだね こういうフレーズが
売れそうだね はっは
こわがらせてごめんね
おじさんたちはもうふるくさいのさ
明日の予報は
晴れまたは曇りまたは土砂降り のどれか だってさ。

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