”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

悲壮にも厳しい未来に立ち向かおう少年たち

 それにしてもコンピューターって便利じゃないなあ。今もこの文章、一度かなり書き進んだら、突然「不正な処理があったのでエラーにします」とかいうメッセージが出て全部消えてしまった。バカじゃねえの。たちの悪いテレビゲームじゃあるまいし、なんで普通に文章作ってるだけで罰ゲームみたいなことがあるのかい。
 もっとも、このノートパソコンかなり使いづらいんだよね。すぐにおかしくなるというか、キーボードが脆弱というか。こんなアホなら昔のワープロの方がよかった。ことにこの「ワード」というソフト、使い始めて何年かたつけどいまだに気に入らない。しょせんは外国人向けというかマイクロソフトの商品ということか。
 そうそう。ゲームと言えば、私はかなりゲーマーなんですが、このところは「ダーククロニクル」と「テイルズ・オブ・ディステニー2」というのをやっておりますが、それで驚いた。すごいグラフィックスとか素晴らしいストーリー、音楽といったものにはもう驚かない。というのはも う、そんなのは当たり前だから。それより驚いたのは内容が似ているんですよ、この二つ。まったく同日(十一月二十八日)に両者とも店頭に並び、かたやはソニー本体が発売(開発したのは九州にあるレベル5という会社)、後者はナムコ、と名門中の名門が手がけております。もとより、お互いの内容が影響を与えることはないだろうし、むしろ個性化を図るには似ていない方がいいわけだから、これは意図しないで似てしまったんですな。
 どう似ているか、というと、世界観というか設定が共通する点多し、なんですよ。非常に管理されて経済的にも物質的にも満ち足りた社会が現在あり、きわめて危機感の薄い平和ボケした民衆が暮らしており、しかしみんなの見えないところで危機が徐々に迫っている。そして背景には、歴史をねじ曲げて都合の良い未来を作ろうとする勢力が画策している陰謀がある、だから主人公たちは、失われた過去と歴史を取り返さなければならない。こういった基本のお話がよく似ているんです。さらに、共通するのが「過 去の時代の方が技術的にも水準が高く、優れた文明をもっていたが、今は失われている」という点。
 だんだん文明が衰退して未来は駄目な状況に、というのはタイムトラベルものの元祖ウェルズ作品以来だし、管理統制されたユートピアが実はとんでもない陰謀に基づく幻想の産物だった、というのもSF系のアニメや小説、映画ではありがちと言えばありがちな設定。しかし、そういうありがちさを超えて、やはりこの時期になにか物語を考えようとすると、似て来るんじゃないだろうか。
 つまり、バブルの失われた十年を経て、妙にくすんで見える未来の前に、じっとたちすくむ我が日本の状況に。違いますでしょうか。
 とにかくどっちのゲームも一見した印象は明るい。でも話はよくよく進んでいくとものすごく暗い。まあ、ゲームはだいたいそうなっておりますが。
 ゲーム脳の弊害は認めるけど、しかしよくできた大人向けのゲームはやっぱりすごいですね。ちゃんと時代の雰囲気を映し出していて下手な小説などより訴えるものがある。だって小説じゃなかなか泣けないでしょ? ゲームだと、出来のいいものなら必ず泣けるようになっております。それだけ脚本家の力量が高いのです。私はそういう意味で、野島某やら三谷某やら、橋田某やらが日本を代表する脚本 家だとは思っておりません。若くて才ある人は今は、ゲーム会社にいると思われます。
 なんでゲームの話をえんえんと書いているかというと、実は心理学の方で、子供向けの小説を研究すると、その社会の近未来が予測できる、というのがあるのです。イギリスの児童文学の登場人物のキャラクターや、台詞を研究して、それが前向きで明るいものが多いとき、それから二十年、三十年後の経済は上向いている。その逆に陰気なものが多いときは、下降しているのだとか。
 今後の日本、というのを占うのにエコノミストはほとんど占い師のようなことばかり言っております。しかし、変な占いしてるより、今の十代以下の子供を観察すればいいんですね。二十年、三十年後の社会のリーダーは彼らなんですから。で、ゲームや漫画、アニメも重要なんですよ、 だから。
 ダーククロニクルも、テイルズ2も、けなげといってもよいほど前向きな少年少女が出てきます。で、肉親の死や自分の属する文明の死すら乗り越えて戦い続けます。それはきわめて感動的なんだけど、壮絶でもある。
 いちおう、前向きなんだけど、悲壮。そんな感じじゃないかなあ、今の子供たちの精神文化は。まだあきらめきってはいないけど、ものすごく険しい未来。今のぬるま湯の 繁栄は失われるだろうという予感。
 たかがゲームなんですが、あまりにも二〇〇二年末を飾る大作二本の設定が似通っていたことが、ここまで私に考え込ませた。ゲーム恐るべし。
 それにしても経済が悪いと、人間も悪くなる。少年犯罪もどんどんたちが悪くなる。大卒者の四割、高卒者の七割近くが就職不可能だと言います。そりゃぐれるのも出てくるだろうといささかの同情は覚える。しかしまた、フリーターといえば聞こえはいいが、要するにかじれるだけ親のスネをかじって生きる、それでよし、という者も増えているのであって、「職寄こせ」と学生がデモを起こしたという話もついぞ聞かない、どんどん国力も生活水準も低下し ていく中で自分だけ楽できればいい、という、これかつての「英国病」そのものですな。
 まだ、親の世代が金持ってますからね、今のところ。でもこれができるのはあと十年ぐらいじゃないですか。今のフリーター世代が子供作ったとして、その子供が二十年後とか三十年後にかじるべき親のスネはもはやないわけですからね。
 英国でも、徐々に国力が低下していくのをみんなほったらかしにしていた訳です。で、今とりあえず楽できればい い、という方針で行ったわけですが、それで出てきたのが三代続く生粋の失業者、という有り様で、親戚縁者に一人も働いたことのある人がいない、みんな国の手当だけもらって、昼間から酒場でくだ巻いている、ということだったんで、そこに出てきたサッチャーが思いきって改革をしたわけですな。そりゃどこかの口だけ「改革なくして成長なし」男と違って、政策も経済も、軍事にまで明るい同女史だったから、英国民も不満はあるけどついて行った。それでそこそこうまく行って今日、英国は一応は盟主アメリカと付き合っていられる立場にある。しかし、サッチャー改革がうまくいったについては、あのころは日本が元気、アメリカも九〇年代以後は元気、というのがあったからビッグバンやって金融バブルしかけて、無理に盛り上げる、と いう手もあったんだが、今の日本はねえ。アメリカも青息吐息になってきたし、イギリスもバブルはじけ気味、ドイツは低迷のどん底と、世界中が駄目状態。そもそも今のアメリカは、特にブッシュ君が出てきてから、景気低迷を戦争で晴らそうとする軍国主義国家そのものになってきた。
 とりあえず、これを書いている現在はイラクで危なっかしい査察が続いております。ですが、とにかく難癖つければなんだって出来るわけで、開戦は時間の問題でしょう。そこに日本が金出そうがイージス艦出そうが、ビンラーデ ィンからも敵国とすら見なされていないらしい(彼の肉声テープによれば)、そりゃつまり十字軍のメンバーじゃない黄色い国なんて眼中にないわけでしょ。
 イージス艦について。なんかあれがどういう種類の軍艦か分からないで議論している人が多いのだけど、あれは防衛用の船です。そういう意味ではあれを出すことはものすごいことじゃない。あれは防空指揮艦なんですから。しかし、なし崩しに派兵の仕方がエスカレートしているというか、国民の無知蒙昧をいいことに(それは国民が悪いのだけど。たとえば高価なイージス艦を一個戦隊四隻も我が国が持っている事実を、今まで軍事マニア以外でどれだけの日本人が知っていたのだろうか)たとえば「選抜徴兵制やります」とか言い出しても、若い者たちは黙ってついていくんだろうか。きっといくんだろうな。ま、いいや俺はもう三十五だし。とりあえずいきなりの徴兵対象じゃないだろう。ともかくほんの二、三年前に「バトルロワイヤル」で騒いでいた、これがもう大して驚くべき内容とも思えない。馬鹿な犯罪やらしておくなら、ガキども集めて軍隊に 入れちまえ、という発想は決して突飛じゃない。
 そういう意味でも北朝鮮、今すぐにもぶっつぶしてしまいたい、という声がある反面、あれを温存しておきたいという声もあるんですぜ。ああいう国が仮想敵としてある方 が国益にかなう、と。少なくとも、もし北朝鮮が滅びたら日本は中国と直に対峙することになりますぜ。その辺の覚悟なんて、今の政府にはあるんだか(まあないわな)。
 いやはや、「ごまっとう」のCDなんて聴いて、アザラシやハリー・ポッターにうつつを抜かして、高速道路がどうのと能天気な議論してるだけじゃあきまへんで、日本人。


日本病

どこが悪いのかしら どんどん調子が悪くなるのに僕たちはこんな船にしがみつくしかなくて しかたなくて
助けを求める声が聞こえるうちはまだいいんだってさ
みんなうつむいて携帯メールでさよならさよなら
これを読んだ人は思い出してください
むかし日本という島国あり 戦争をしたり金儲けをしたり あれやこれやのうちに脂肪肝を肥大させて
そして静かに消えていきました ぶくぶくごぼぼ
お母さん どうして僕らを産んだのですか 暇だったんですか 人生が楽しかったんですか いいですね でも僕ら おぼれ死ぬのは死ぬほど怖いです 携帯メールで さよなら さよな、 バッテリーが切れます 僕も切れます みんなで同じ安売り弁当を食おう ぐぶ こぼぼ 
ああ 東方の不思議の国 
ちいさなあぶくが


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