”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

マイクを突きつけられて

マイクを突きつけられた
街の中でね。
今、一番言いたいことはなんですか、とね。

急にそんなことを言われたけど 答えてやったのだ。

ゆうべ、帰ってから急に音楽を聴きたくなった、
なぜだろう
か、と。
ブラック・サバスのチルドレン・オブ・ザ・シーを聴き、
レインボーの十六世紀のグリーンスリーブスを聴いた。
ヨーロッパのキング・ウィル・リターンを聴き
(ところでこれは、指輪物語の第三部、王の帰還を下敷きにしていたのだと気づいた)、
セブン・ドアーズ・ホテルを聴いた。
ゲイリー・ムーアのドント・テル・ミー・フォア・
ザ・ルーザーを聴き、
Y&Tのミッドナイト・インTOKYOを聴いた。
マイケル・シェンカーのメイク・ユー・マインを聴き、
またレインボーの銀嶺の覇者を聴いた。
一九八〇年代の音楽。メロディアスで、音は素朴で、
リズムは跳ねない。
昔馴染みの音楽と
昔馴染みの悪魔めと。
そいつが囁くこと、囁くこと。

見えませんかい。
街を 歩き歩けば 占領軍の群れが
パンチラ女の子たちと手を組んで
遺伝子に手をつけようとしておりますです。
駄目な素質のものは
子供を作らないように
社会の足かせですからね
犯罪です。
街を歩き歩けば
南米の音楽を延々と演り続ける楽団がみんなの通行を
妨げ、ドラッグ売りを目立たなくする。
神の再臨を繰り返し説く宗教団体の宣伝車と
国体の真姿顕現を思うに強懼に耐えずと訴える。
右翼団体の街宣車がボリュームを絞ることなくすれ違う
この街にはスムーズさが足りない。
邪魔なものはいなくなるように。
ギターはディストーションがかかっていないと嫌だ
素直な音は聴きたくない
癒してなんか欲しくないのだ。

進歩
どっかへと進歩
できないものは
いなくなるように
聞こえてくるのはそんなお話。
小金が溜まった人は何もしなくていいのです。
家が建ったのでもうローンさえ消えていけばいいのです。
時間がたち 墓場が近づき
みんながみんな 楽になる、
諦めちまえ 諦めちまえ 諦めちまえ
政府与党は絶対安定多数です。
もっと年金を
とにかく金を。

人間の糞世の中がどうなろうと どうでも
いいじゃありませんか。
悪魔めが
囁くこと囁くこと
前に謀反を勧めたのは何年前のことだ。
近頃はもうどうでもいいんだ 腹も立たなくなった。

ロックは、音楽は、八〇年代までだ。
その後の音楽の、独りよがりな袋小路に陥ったこと。
思うに、未来の老人ホームでは、浪曲も演歌も流さないね。
ハードロックバンドが慰問に訪れるに違いない。

つうことで、最後に愛みたいなもん
をあなたに。
セント・ヴァレンタインデーが近い。それでええと、

面白くない! 俺は面白くない!


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