”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

海港そして箱を積み出すところ

うんざりだよね ほとほとうんざりだ 
こんなことならなにもかも箱に詰めて箱に詰めて箱に詰めて
運び出してしまいたい 運び出して運び出してどんどん運び出して
僕の周りから消えていけ 消えていけ
古い思い出 街 雑誌とかペットボトルとか
飲み残しの昔とか愛とか恋とか

僕は知っている もしくは知らない いいやなんにも知らない 知らない
ここは新しい都市 海鳴りが聞こえ 若者たちは子猫のようにじゃれる
王家の人のように高い 高い塔に住まいたがる
家々から日が昇る様は見える 光線の金
はまばゆい 貧者にも愚者にも
ところが
日が没する様は 知らない 見えないのだなんにも
覚えていない あるいは見ようともしない
誰も彼も 地上を通りすがるかりそめの旅ゆく者たち
異邦人でない者はいない
ぼくたちが誰もいなくとも
地球は回るだろう

人工を愛する者は幸せでそうでないものは 今やどうやって生きていけるのだろう
もっとも無理をして僕たちはなにかここにあらねばと
悪あがく
身体にいいものを食べようとする 血圧降下剤やサプリメントを
むさぼり呑んで眠る
フィットネスで汗をかく
そうやってしがみつこうとする
何に?

生に 地上に 身の回りのあれこれに
そうやっているうちに
僕らは立ち止まるのか
船着き場 もやい縄は腐っている
青春があった者にもない者にも
旅が終わるところ

書き直すのは面倒だ フロッピーディスクになんでも入れてある
僕はこの一枚のぺらぺらのプラスティックに綴じ込まれた磁気カードだ
保存なんかしていないから
ゴミ箱に入れてしまえば
いなかったのと同じ
そんなふうに脚を組んでコーヒーショップで言い放ってみる
ちょっと前に先端っぽかった感性を僕らは憂えるもしくは軽蔑する
無駄な言葉の奔流がこんなにも温度がなく味も素っ気もなく
押しながしていくのは
それはテクニークの問題なのか
深読みして欲しい

頭上を 大型旅客機が旋回する 時折 超音速戦闘機の群れが秋刀魚のように
高空を泳ぐ 
とても とてもとても
積み上げられた どうでもいい日常的な あまりに日常的な
語り 夢 セックスに希望 政治家の言葉に新聞の言葉
ノアの箱船に積み残されそうな
みんな
とりわけ僕

運び出してしまうか どんどん今のうちに
どこかへ どこでもいい あるいはどうでもいい
救いなんか求めない 美しいものなんか
そうじゃない スピードが落ちたなら落ちたで

反語を語る聖人
もつれ合いながら転落していってしまえ
昨日まで大事だったことどもは流れ去ってしまえ
盛大な葬儀をしてもらうことを望むな
自分がいない世界はないのと同じだろう
最後の王は 常に王墓を築けない
僕はいつしか
空っぽの箱の中の王様 ほかのみんなと同じでね。

【詩作メモ】最近は悪いことをしたといって、手入れを受ける会社や事務所が多いですね。あれで検察の人たちって、引っ越し屋さんにいつでも転業できそう、と思うのは私だけ?
専用の段ボールもおびただしい数。そういえば「温州ミカン」なんて箱は使っていませんよね。専用の段ボール業者があるのか?

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