”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

ろっぽんぎ第三帝国

ここに来るといろいろ異界が透けて見えたりする
今日も 気がつくと御通りになるのであった
すこぶるつきの人物の葬儀が始まるのであった
だが
邪魔なものがいる
有象無象である
いつの世にも邪魔な存在である
そこらへんにいる 鈍い鈍いヤツら
マトハズレてやがる マトハズレちまってやがる
ちがうんでないの ちがうんでないの
ああん
こしふれワンワン

メールを打ってるヤツらを後ろから刺せ

押し黙って押し黙って進む 夜這いのように
ひそかに侵攻する 滑らかに すべらかに
ばっくりでかい奈落 奈落の底には
けっこうな未来をご用意しているものらしい

絶望の向こうになにかがあるかって
あるもんかね

他人の不幸すら羨む 羨ましいね
人の気も知らないでね 人の気なんか知るもんかね
とつぜん破裂しないでおくれでないかい
じゃまああくさいんだよ そのへんの他人よお

見るがいい ニュルンベルクよりも豪勢なネオンサインを

デスマスクのハイドリヒ
鷲の徽章の林立する中 国葬の車列はおごそかに進む
プリンツ・アルブレヒト通りの魔王
国家公安本部長官兼保安防諜部長官 
第三帝国ボヘミア・モラヴィア副総監
親衛隊上級大将ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ
ヴァイオリンの名手で
策謀と計画的犯罪の天才
つまりはいつの時代にも有能とされる人物
しかしもう賞味期限切れなのであった
いつまでも勝ち馬には乗れないのであった

今しも粛々と六本木ヒルズを貫通する
けやき通りを轟々とマイバッハ770Kの群れが
魔界のサーカスの猛獣のごとく押しとおる
ああ天才にして天災
世界中の悪と不幸を一身に背負って去る逆救世主
のっぺりと白蝋じみて長い 冬瓜のような
彼のデスマスク
読み取れ しかと読み取れ
彼の軽蔑を
人間なみの小さな幸せへの憎悪を

見えているのである私にはね
ほかの大方の者どもは数寄屋橋次郎で寿司をつまむか
ジョエル・ロブションのラトリエでコースをとるか
悩みつつ 後場の終値チェックに余念がない

私はずれていますので
霧の中
葬列をじっとじっと見送る
ナチス式敬礼で見送る
私のディオール・オムの革のコートはぴったりしていて
ゲシュタポ風である

ああさて あんたらの時代は終わりそうで終わらないんで
困っているのさ
あんたら発明の 他人押しのけ踏みつけにして
サディスティックに高笑いするやり方が
今でもばりばり通用するのさ

えいくそお 
鈍いやつら メールを打ってるヤツらを後ろから刺せ

もういい 分かった

私の党員ナンバーは何番になる?

注)ラインハルト・ハイドリヒ(1904〜1942)
ナチス・ドイツ親衛隊のゲシュタポ(秘密警察)の長官で、
三十八歳で最高位の上級大将にまで上り詰めた。
ユダヤ人「最終解決」の責任者。
チェコ義勇軍の工作員に暗殺される。


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