”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

僕はきっとでかいバンズにはさまれて幸せ

世界の色がくすむ 見えない見えない叫び
踝は 白い 白く浮き上がる ぼんやりと薄暗くなる中で
死んだ者だけが罪を負わない
さよならさよなら 天国に誘導弾は届かない

さっきから 嫌に白い 白いんだなあ
男の裸の大きな尻が 血の気がうせて 真っ白白い それからこっちには
踝と踵だ ばらばらだ 部品が 散らばっていて
えへ えへへ

正義の歌がうるさい 撃墜マークの旗が目障り 目障りだッてんだ
WARビジネスは公正かつ公平に 昨日は皇帝 明日はフランス王に
それからスペイン王 教皇 誰にでも仕えるよ 予約でいっぱいだ
仕事でいっぱいだ 僕らはいっぱいだ しゃぶりたいのはおっぱいだ
ありふれたありふれたありふれた
 おっぱいだ おっぱいだ おっぱいだ ママのしわしわのおっぱい
 しょっぱい 汗の味だ おしっこの味だ からいからいからい 懐かしい海
深い深い

僕がゴカイだったころの幸せな先カンブリア紀の陽光

よっぱらいだ 量産品だ 失業者を集めよう
着る者も食事も住むところも与えよう
それから
安価な突撃銃もわかりやすい取り扱い説明書もスローガンも
敵も

帝国 なんだってさ レイ・ブロックはどうやって五十二歳から
彼のハンバーガーショップを世界の隅々まで行き渡らせることができたんだ
ロシアでも南米でも東洋人の国 東の果ての島国にさえも
五十九円の至福 五十九円の笑顔 赤い包み紙 屍肉は砕かなきゃいけない
クラッシャーで 手榴弾で スマート爆弾で 

僕はきっとでかいバンズにはさまれて幸せ 飲み下してもらいたい大衆の胃袋に
幸せな全世界市民よ やっと出会えたね みんなが幸せだ レタスは高すぎるから
ピクルスだけで我慢して欲しい 
そして受け入れてもらうんだな 輪廻の輪に 僕は幸せだ そうなってりゃなあ

温かいから失禁したのかと思ったら そりゃ血だった
あほなことを考えている暇もなく
僕は引きちぎられた
海を思い出した ママを思いだした 

なんだあの 白い尻は僕の尻 出来の悪い脚の部品も僕のだった
僕をこねてハンバーグにして焼いてくれ
もうすぐ 罪がなくなるのなら結構だ

さよならさよなら 僕の時間だ
僕の前世はかわいそう 僕の来世もかわいそう
いつもいつも同じだけの空気と居場所
食われなかったハンバーガーはひっそりと
消えて行くだけ。

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