”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

ダース・ベイダー卿行状記

暗黒面に落ちたのはもう六十年も前のこと
これまではなんとも
感じていないのだが どうしたもんか 無限に広がる
大宇宙は 想像を絶する
いかがわしさで満ち満ちて

この星空に口づけするとき どこかからどこかへ
ワープ航法でスターデストロイヤー級大戦艦が
みんなの人生を砕いて行き過ぎるとき

静かに時計が回り 僕らの贅肉の中に
毒針が突き刺さって
抵抗できなくなる

今 この瞬間もトルーパーたちは世界中に展開して
テロとの戦いを遂行している おまけに
立派な演説文の原稿の推敲まで行われている
ブリーフィングルームは完全禁煙である上に
セックス厳禁である

おおやおや 皇帝陛下はすっかり醜くなられた
それにしても我らが帝国に臣従してから
どんなにかいいことばかりであったことだろう
なぜ人は誰かに臣従するか それは
臣従しないことには謀反を起こせない

機械の腕に機械の脚 それに機械の下半身 機械の
機械の自動車工場 機械の政府税制調査会
働かない人間なんてみんな怠け者だから死んでしまえばいいんです
そんな感じ? おおおおおお ダークサイドの魔力が
むんむんと湧き上がって
多くの男たちが不能になる

宇宙にも灯台は必要であり 灯台は船を女たちへと導く

びーん ぶーん 新世代ドルビーシステムをもってしても
ちゃちなライトセーバーの音は迫力が出ない
なんで我ら いい年こいて蛍光灯を振り回しているのだろうか
どうして劇場で見る夢は総天然色で
嘘味ばかりのポップコーン臭いのでしょうか
ハリウッド それから楽しい人生
政治家たちは安全だが みんなの住む都市はいつでも
吹き飛ぶかもしれない

にこ毛に包まれた白い幼顔を鋼鉄のマスクに包んで
押し隠せ 押し隠せ なにも知らないということを
漆黒の鎧に包むことで
ダークサイドの力がみんなを幸せな世界に運ぶ

元老院が 二つの昼と朝を迎える間
もう誰も皇帝は自分だとは宣言しないだろう

なんてなああ 思わせぶりな比喩の典型は
ノストラダムス風に書くことだ もちろん無意味文である
ええええい いい加減にせんか コンピューターはどうして
私の語彙を理解しない まるでうまく変換できぬ

さっきのは単にスピルバーグとルーカスの映画が激突する
ということの詩的表現さ なんでもありゃしない

仮面の下 もはや若くもない
傭兵たちが金につられてどこにでも現れる
無力な丸腰の軍隊を庇ってくださる
何事も軽装がよろしいのだ 軍隊もクールビズだ

ひとつ言っておくと 比喩は部分ではない
全体が そのものが 
私においては比喩である 批評である
文学とはそういうもんだろう?

ああああああああ ふううう はああああ
呼吸がマスクの下では息苦しいではないか
我らは帝国を支えているのだ
我らは
つまりLANケーブルで頭脳ごと接続されているのだ
ブログの林の中で 誰の言葉も無力で
あなたが詩だと思うものも
もう誰も立派なものだとは思わないだろう

でええええい 決起の時だあ
謀反だ それから邪魔者はみんな殺してしまえ

高性能生体レンズの向こうに輝く月の色は
生身のときとは違って見える

エンジンルームが止まってさあ
生殖器が腐ってさあ
どう誤魔化してももう駄目だ

わかっているだろう全国民よ

謀反を起こせ 皇帝を切り殺せ
謀反を起こせ 仮面をかなぐり捨てろ

血が錆びる前に
自分を見つけ出さねばならない

そのなんと 大きなフォースのいることか。

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