”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

小さくならないで僕の君

小さくならないで 僕の君 
君がよろこぶのが僕は好きだ
小さくならないで 頼むから僕の君
君が笑ってるのが僕は好きだ

鯉がだばだば泳いでいるし つがいの水鳥はくわくわ鳴いているし
だれしもがそれなりに楽しそうで幸せそうな昼下がりの公園
みたいな
情景 
そういうのあるじゃない そうそうそんな感じ
そういうの嫌いですか
みんなと おんなじなんていやだ と家を飛び出したり
馬鹿やったり だよねえ そのとおりそのとおり
僕も
そういうのずっとくだらない と思ってた 思ってたんよ
そんでのどかに わあとかきゃあとか そういう凡庸くさあいの
イヤだったんだけどさあ

君がいる日差しは明るく君がいる公園は楽しく
君がいる地球は僕もいてもいい場所
そして君がそこにいてくれるだけでいいというような
ちくしょうめ 白状してしまえば
僕は君がいるとうれしい にこにこ 言ってしまえ言ってしまえ
時間は砂金のように流れる

だ というのに
君が 急に おかしくなって病気になって小さくなっていく わけよ
小さくなって小さくなって どこまで小さくなるんだよ 止まってよ
止まってよ 止まってよ 僕の君 僕の君 の
大きな瞳 なのに
小さく 縮んでいくのはどうしてさ どんどんつかまえられなくなるのは
どうしてさ
時間は激浪のように二人を押し流す

そのまま薄く薄く紙のようになって 消えてしまうんか
そうなんか そういうもんなのか 消えてしまったら
僕はもう会えないのか わあもきゃあもくわくわもだばだばも
おしまいなのか永遠に
はん 永遠なんてここにあるんか 海じゃねえ太陽じゃねえ
時間は君のいのちを削り
僕を削る

僕のお肉を分けてあげるよ
僕を分けてあげるよ
だから
小さくならないで 僕の君
君の僕はどうしたらいいんだよ
小さくなる君は こわいよ
もうご馳走も大金も車もくだらない くだらないんだよ
小さくならないで 小さくならないで
止めることはできないんだろうか
時間よ 地球のぐるぐるよ

お前らなどみんな止まってしまえ。


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