”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

圧倒的大多数の皆さんへ

大多数の皆さん 圧倒的大多数の皆さんへ
いろいろ申し上げたいことがあるような
気がしましたが
だんだん
分からなくなってまいりました
勝手にしてください
善良な
まことに善良な有権者の皆様

電車を 推進するモーターが
溶解しそうなほど
時間に正確でなければならない
朝 置き出してから 電動歯磨きを口の中に突っ込み
催す きつい胃液の
逆流に
壁が
四つの壁が
倒れ掛かる
構造計算の手抜きのためだろう

吊革を引っつかんでいる みんなの腕 腕をば
青膨れの不平不満で ぱんぱんにしているのに
なんだってか
車掌は換気もしないで
血圧を測りもしないで
業務用のシェードをしっかり降ろして 決して
ほかのヤツらは立ち入らせない
ガード万全で エロ雑誌を読みふけるとき

車両内 この一編成にたぎりたつ 
       勃起不全の ナイフは何本

五七五できちんと叙情をあらわせり
どうかしっかり読んでください

彼はそれでも結社の一員なのだった
有象無象ではないのであった
うつくしいニホンゴでどうかしっかり しっかり
あなたたちのことをうたってくださいませ
大多数の皆さん
圧倒的大多数の皆さんは
そこらへんで立ち見は自由
いまもっておとなしい人がおとなしいなりに
立身出世をしていくだろう
さもなければ首だ 首だ
みんなして首だ
さあ拍手を ここでひとつ拍手を

もっと違うやつらもいて
天に突き刺され卑猥なる帝都中心部
六本木ヒルズ
毎日毎晩たくさんのケータリングのご馳走が食い散らかされ
便器から下水に向かって流れ落ちていく街

毎日毎晩たくさんの女たちの下着が取り払われて
新品でもうまくつけられなかったコンドームと
使い古しのコンドームが
便器から下水に流れ落ちてつまりを起こし水圧異常を
催す街

電気と金 電気と金 それから電気と金
世の中は
電気と金
株価が上がり続ける間は 電気と金

楽しすぎて
なんだって馬鹿な人らは存在するのか
いいや
彼らから少しずつ金をいただき
俺たちゃ
とても楽しい
人生は
楽しすぎて
あへ あへへへ
ああここでまた また拍手を なんでもいいから
拍手を

電車はだらんだらんと帝都中心部に吸い込まれていきます
地下奥深くに沈む込み 潜り込み 
労働力は量り売りされてゆくのでありまする
一編成でこれこれいくら
出来のいいのがまあ一割ぐらい あとは
床でも磨かせておくさ
労働は諸君を自由に導く
アウシュビッツのスローガンだな

レールモントフは読みましたかね ああそう
プーシキンはどうですか はあそう
フランスの詩人はみんなあけすけでエロいですな あはあはあは
それから
だって面白い詩なんてそんなのばかりですぜ
なにを気取ってやがんでええ

電車に乗るのも電気と金と性欲で生きるのも嫌だとする
どうするんだい圧倒的大多数じゃない人
圧倒的大多数じゃない
あなたは

どうします?

ひとつにはナイフを 別の方向に向ける
主に 十歳未満の女の子に いや できることなら
小学校の三年より下 それ以上になるともう
あいつらとてもじゃないが手を出せない
汚らしいものを見るような目つきで
見やがります
それから内蔵されている
彼女らのコンピューターが無言の計算を始めやがります
おじさん それでいくらなの
いくらなの いくらなの
おじさん あなたって
いくらなの それで
あたしって
いくら いくらだと思ってんのさあ
そんな
すがるような目で
たとえ命の危険に瀕してすらも
多くの女性の命取りはそれである

ロリコンだって ロリコンにでも いいやロリコンにこそ
権利はあります
愛の手を どうか彼らに
ナイフを立てるなら ナイフを立てるなら
まだ膨らんでいない女の子の胸に
ぼぼ ぼぼぼぼぼくの
ぼくの
ポポッポポ ポエミ ポミエ ポポンム ペニーちゃん

馬鹿が大馬鹿が
お前らのペニ公なんぞ切っちまえ
切った後の傷口を福沢諭吉でおさえておけ
血がだらり お前らの腐れた血で
神聖なる俗なる
大先生の肖像は汚れるし
ぴかぴかの偽造防止用印刷は台無しになるしな

とまあこういう連中も捨ててしまうとしまして
今までのどの類型でもないあなた
あなたに訴えます
圧倒的大多数じゃないあなたに

詩を書きましょう
美しい 詩を書きましょうよ
拍手を 盛大な盛大な盛大な拍手を
なんで? 聞こえませんよ
どうしてです 少しはいてもいいでしょう
私は勝ち組でも負け組でもなくて
詩人という輩です

お願いだから拍手を おや
なんで石が 石が飛んできやがる

詩について否定的なことは書くべきじゃない
嫌がる人がいるから
それから挑発的だったり偉そうなことも書くべきじゃない
題名も短くて無難なもの
そう教わったがねえ
もういいんだそんなこたあああああああ
そんな時代かよお
馬鹿なチュウボウが機関銃撃ったとか
薬やってラリったとかそんな話書いてりゃうけるご時世に
人生の潮時はせいぜい十四、五歳
花は枯れちまえ 鳥は落ちちまえ
風なんぞ締め出せ 月は見えやしない 摩天楼に
金と電気がこうこうとこうこうと灯る間

ああいかん 激してしまって
本題に戻りますけれど そんなわけで
大多数の皆さん 圧倒的大多数の皆さんへ
いろいろ申し上げたいことがあるような
気がしましたが
だんだん
分からなくなってまいりました
勝手にしてください
そうではなく

あなたに訴えます
圧倒的大多数じゃないあなたに

じゃあ詩はやめましょう 勝つのも負けるのもやめ
賃貸ビルにふんぞりかえるのも電車に乗るのもやめて
ロリコンに走るのもやめておきましょう
電気も要らないし金も要らないし
美しい言葉で 美しく 
ニホン本来の

本来の

なにがあるってええんだ
嘘つきめえ

どこまで遡ったらそんなに立派だってえええんだ

ぐわは!

胸に開いた穴 すみません党首が倒れました
本日をもって
圧倒的大多数の人のための美しい詩を擁護する運動は
解散いたします
皆さん どうか

次の機会までナイフをもっとぎらぎら
研いでおきやがれ!


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