俺は自分の中の鬼が怖くてならない
自分の中の鬼が怖くてならない 近頃
このまま埋もれていくのが怖くてならない
そんなお年頃
まだ悪いことをしていないだけ
していないってだけだから
カーブを曲がりきれないのだよ 時速百五キロでは
俺たちはみんな
曲がりきれないのだよ
曲がりきれない
切れないのだよおおおお
通過できないのだよ
行くところがないのだよ
割れて砕けて裂けて散るしかないのだよ
まだしてない
してないぜ ベイビー まだだ まだまだ
まだやっていない だけ
いつも いつも思っているけど
やっていないだけだ
さ
なにをって……
燃やしてええええ 壊してしまいてえええええ
邪魔なんだな
俺の前を歩くやつも 後ろから来るやつも
みんなみんなみんな邪魔だ フルスロットルで俺は
駅舎を破壊したい 道路を破壊したい 学校を破壊したい
幼児を破壊したい 会社を破壊したい
メールアドレスの山を破壊したい 納税通知書を破壊したい
女たちの柔らかい衣服を引きちぎれ 子宮を取り出せ
未来ごとどぶ川に叩き込んでしまえ
徹甲榴弾で 破壊したい
ナパーム弾で 焼き払いたい
小型戦術核で 破壊したい
ソドムめ ゴモラめ
俺のいまいる こことかそこめ
要するに俺め 極悪人め
俺は自分が恐ろしくてならない
余のいない世界など無意味だ みんな破壊してしまえ
独裁者のセリフである お見事である
みなよく我慢が続くものだ
みなよくひっそりと生きていられるものだ
みなよく暴発しないものだ
みなよくそこでそうしていられるものだ
暴力革命だ 開戦だ 宣戦布告だ
大いに結構だ やるならやれ なんでもやれ
俺の部屋は暑い 面白くない
頭は冷えない
自分の中の鬼がうずく うずきやがる
このまま埋もれていくのが恐ろしさに
なにを企むか 結局のところなんと無意味な端境で
俺たちはいい気になっていたものか
連絡はもう来ない
これはもはや詩ではない
書き足すことはもうありはしない
これはもはや読ませるものではない
絶望の後の絶望の後の絶望の後の絶望
そこで俺たちみんな
ニホンには宗教がないことに大いに感謝するのだ
救いはないので安心するのだ
あと一歩か二歩だ ラスコリニコフよ
俺の中の鬼がぞわ と身をもたげ
俺のチャクラの座からつむじを経て羅刹界の深奥まで
破壊神がなにごとかをそそのかすとき
俺は
もう俺じゃない
のだとしたら 誰だ。
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